志賀高原を55km走ってきました。

店主の趣味

人間は窮地に立たされた時にこそ本性が出る。

であるならば、巷で流行っている性格診断をするよりも「追い込まれた状況に立つ」ことの方が自身の本性を知れるでしょう。

ということで出走してきました。志賀高原100 55km部門

きっと貧弱な私は窮地に立たされ、弱い自分に直面し愕然とするだろう。そんな期待を胸に抱き戦友のこじさんと共に信濃国へ。

7月6日(土)4時半起床。
朝食で1000kcal摂取。ウ〇チも済ませ、足首には捻挫予防のテーピング。準備は完璧だ。

スタート会場に着き周りを見渡して気付かされる。出走者のほとんど(盛ってます)は坊主で痩せ型。下腿もシュッとしたシシャモ脚。神々しい立ち姿でみんな強そうや。

“幾度となく弱い自分と直面する中で悟りを開き、神々しくなっていったに違いない”私はそう解釈して胸を躍らせた。私が坊主になる日もそう遠くないかもしれない。

AM7時。号砲と同時に一斉スタート。364人の出走者の中で、真ん中より前方くらいに位置付ける。前回の反省を活かして前半から突っ込みすぎないように気をつける。学習しております。

今回は前半30kmまでは下り基調の走れるコース。気付けばあっという間に1時間。空腹を感じていなくても早めに補給していくことが鉄則。しかし食欲がない。ジェルすら摂取したくない気分である。心拍数が上がった状態で食べる練習をしてきていないから。

結局第1エイド(16km地点)に着くまで補給できなかった。エイドでバナナと温泉まんじゅうを摂取。合計で100kcalくらいだろう。この時すでにレース開始から2時間近くが経過していた。この補給不足がこの後響くことは頭では分かっていた。

エイド後からは標高800mくらいまでひたすら下り続ける。当たり前だが下りはスピードが出る。この時に筋肉に負荷をかけないためにはブレーキをかけないことが大事。なのでスピードを止めない。そもそも止められるほどの筋力は私には備わっていない。つまり選択肢は一つ。重力に身を任せ転げ落ちるように突進することだ。イノシシの如く。

捻挫に細心の注意を払いながら下り区間で10人ほど抜いた。下りで止まることのできないイノシシ男による本日のハイライト。

降りたところで第2エイド(32km地点)。食欲はほぼゼロをキープ。ここまで3時間22分。麦茶とコーラのみ摂取し、軽くストレッチして出発。ここから10kmくらいが本日のメインディッシュ。1200mD+の激登り区間だ。

登り始めて早々に右内転筋が攣り始める。立ち止まってストレッチしていると、後方から抜いていく神々しい紳士に「下りであんなに飛ばすから〜」と笑顔で言われた。「補給ちゃんと摂りなね!」とアドバイスをいただき、紳士は足早に去っていった

助言通りにジェルを摂取。お気に入りのマグオン梅味。すると途端に足攣りが治まった。こんなに即効性があるなんて驚きと感動。紳士に感謝しながら、スキー場を逆走して登っていく。

標高800mまで降りてきたことで気温が上がっていた。雲の隙間から陽も差し込んでいた。心拍数はずっと180オーバー。途中でキツくて吐き気がしてきた頃に、前を行くおっさんが「ヴォォォェェ」と勢いよくリバース。おっさんのリバースシーンを見るのはなんだかんだで人生初かもしれない。志賀高原まで来て貴重な経験だ。
きついのは皆一緒。もらいゲロしそうになるよりも「こういうオジサンにはなりたくない」という気持ちが勝り、私から吐き気は消えていった。

この激登り区間は辛すぎてあまり記憶がない。ずっと心の中で「キンキンに冷えた麦茶が飲みたい」と唱えていた。いつでも冷蔵庫のキンキンの麦茶が飲めるという当たり前の日常への感謝の気持ちが芽生える。坊主になる日もそう遠くはないかもしれない。

麦茶のことだけを考え続けて2時間半。焼額山の山頂まで到達。今日のメインディッシュが終了した。
登りきったのでまた下りに差し掛かる。が、足首のテーピングが擦れて痛むトラブルが発生。疲労ももちろんあるが、テーピングが痛くてスピードを出せない。斜度20%ほどありそうなコンクリートの舗装路。さすがにブレーキかけなきゃ死んじゃいそうだが、ブレーキをかける筋力はない。イノシシ走法より早歩きを選択。

なんとか怪我せずに降りきったところで第3エイド(46km)。最後のエイドだ。ここで一旦靴を脱いでテーピングを外したら、内果のところで皮が擦れて剥けていた。地味に痛いやつ。

エイドを出て最後の区間。もう走れないと思いながらも周りが走ってるから頑張って走る。神々しい坊主どもは強すぎる。そしてラスト3kmになり雨が降り始めた。「ゴールしたら温泉行って頭から水風呂に飛び込みたい」そんなことを考えていた私には恵の雨だ。シャワー浴びながらのゴール。

記録:8時間4分29秒
順位:66位/364人(男性)

完走は素直に嬉しかったが、やり切ったという満足感はなかった。「もうやめよう」と思ってからがスタート(安全が確保されなくなってから)。そう考えれば、55kmのレースを完走しても、私の中ではまだスタートラインにも立てていないということになる。トレランは奥が深い。

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