「なぜ駄菓子屋をやろうと思ったのですか?」
これまでに多くの方々から、このような質問を受けました。
駄菓子屋をしようと思った1番のきっかけは、「子どもが一人でも安心して気軽に来れる場所」を作りたかったからです。
ヒトはヒトとの関わりの中で、社会との関係の中で存在し、成長していきます。
特に子どもの頃は、親以外の大人との関わりがとても大切です。
大好きな学校の先生、クラブチームのコーチ、隣の家のおばちゃん。
様々な距離感の大人がいる中で、“駄菓子屋のおっちゃん・おばちゃん”というのは、距離感として非常に絶妙だと感じます。
その場所に行けば、必ずいつもそこにいる。
僕の名前も知らなければ、どこに住んでいるのかも知らない相手。
だけど顔は分かり、いつもそこにいるという日常がある。
会話がなくとも存在が感じられ、「ここに居て良い」と思える。
そんな程よい距離感こそが安心に繋がると思うのです。
近年は子ども食堂のような居場所づくりの取り組みが全国で展開されていて、大変素晴らしい活動だと感じています。一方で、「子ども食堂には行きづらい」という子どもたちにも、場を作りたいと思いました。
それはつまりメンバーシップを与えられる「コミュニティ」ではなく、中距離の関係性が生じる「場」を作るということ。
お店にいきなり来てもいいし、来なくてもいい。
店主と会話をしてもいいし、しなくてもいい。
コミュニティではないからこそ、積極的に関わる必要もない。
ふらっと来ても承認され、排除されることがない。
これらは「場」がもたらす機能であり、「コミュニティ」には担えない距離感です。
駄菓子屋は「駄菓子を売る場所」ではないのです。
そこは駄菓子を介して子どもと大人が程よく交わる場であり、子どもが自分の存在を認めてもらえる場なのです。